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『宇宙戦艦ヤマト』という作品との関わりについて (庵野秀明より)
『宇宙戦艦ヤマト』という作品との関わりについて、少し。
50 年前の「ヤマト」の世界は本編映像だけで大きく、テレビ版、劇場版(スターシャ死亡編)、劇場のテレビ放映版(スターシャ生存編)と存在し、小説も石津嵐先生のソノラマ版をはじめとした数種、漫画も松本零士先生、ひおあきら先生、聖悠紀先生と放映とほぼ同時期に展開されていました。自分にとって「ヤマト」は同時に複数の世界が存在する作品でした。もちろんその感覚は、『ウルトラマン』、『ウルトラセブン』、『仮面ライダー』、『マジンガーZ』、『デビルマン』等でもテレビと漫画の世界描写の差異で感じていた事です。そのパラレル感の中でも「ヤマト」は特別でした。テレビオリジナルにエポックな世界観と複数の作家が様々な「ヤマト」を様々なメディアで自分の作品として自由に個性的に描いていたからです。
リメイクシリーズの『2199』も本編映像とむらかわみちおさんのコミカライズはパラレルになっています。
続編としての『さらば~』と分岐する『ヤマト2』で「ヤマト」というシリーズ作品のパラレルワールド化は決定的になりました。松本先生が描いていた「ヤマト」の世界もパラレルで有り、西崎義展さんの復活篇も本編が2つ存在します。日本のシリーズコンテンツの代表である「ウルトラマン」、「ライダー」、「戦隊」、「ガンダム」等でも枝分かれやリセットによるパラレル的な存在は現在も継続されており、その数はすぐには数え切れない程の数字になっています。
歴史だけでなくコンテンツとして強度の高い作品にリセットやパラレルは当然の事象と思います。
自分にとって同じ作品が重なったまま複数存在するのは、子供の頃から当り前のことでした。
先人の作られた「ヤマト」の歴史を自分達もまた踏襲していると同時に複数の「ヤマト」が存在するパラレル感は「ヤマト」らしい流れの継承であると思っています。
70 年代の終わりに、『さらば~』と『ヤマト2』で個々の好みが分かれファン同士が互いにあれこれと感情論や論争をぶつけ合っていた苦い歴史も経験しています。
最初にインプリンティングされた作品による〇〇推しの違いがファンの間で争いとなるのは歴史の長い作品の宿痾なのだろうと思います。
この度自分は、関係各社のご厚意により新作の『ヤマト』を作ることに関して比較的自由な権利を得ました。だからこそ、中2の自分の夢を叶えるという小さな目標ではなく、新作の『ヤマト』は次の100周年に継続する可能性の高い作品群にするべく心掛けています。
自分が関わる作品が今後どれ程出航し、公開という目的地に辿り着けるか分かりませんが、とにかく全力を尽くしています。今我々に出来る事はそれだけですから。
そして改めて、現在進行中のリメイクシリーズ『3199』の航海の安全と無事な帰還を祈ります。
株式会社カラー代表取締役 庵野秀明
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